【横領事件】AppBank(株) 2015年(平成27年)に発覚した横領の調査報告書
前回「マックスむらい氏のインタビューでの発言が、自分の落ち度にまったく言及せずにいておかしい」と、AppBankの当時のIRを掘り起こしてみてみました。
【IRって何?】マックスむらいの言葉と、当時のIR・適時開示の比較
この中の横領の「調査報告書」が111ページの大作で、内容や登場人物の人でなしっぷりがとても興味深かった。
(調査報告自体は実質103ページ)
- 第三者が不祥事を見る
- 上場してわずか2ヵ月で横領発覚、そして調査
- 登場人物紹介で強力な協力者
- はじまりは税務署
- 横領規模の巨額さ、そして注目の時期
- 協力者A氏(内部監査室長)も不正だと知らなかった
- 【重要】横領金の使い道を華麗にスルー
- 犯人の動機「間違いを事実にしてしまえ」
- 犯人の悪党っぷり
- 経営陣のボケナスっぷり
- 報告書のおわりに、そして感想
第三者が不祥事を見る
企業の不祥事の調査報告書(第三者委員会による調査報告書)はたいてい傑作です。「事実は小説より奇なり」を地でいくものばかり。
なんせ、不祥事が取りざたされる企業は必ずゴタゴタしているわけで、それを外部の人間に指摘されつつも、その調査委員会側の手心や忖度なども垣間見れたり
つまりドロドロのノンフィクションなんです。
一応公的なIRなんで、虚偽を書けないのでね。
事実や資料や装飾の無い説明からにじみ出る「企業の腐敗臭」。
上場してわずか2ヵ月で横領発覚、そして調査
http://file.swcms.net/file/appbank/ir/news/auto_20151210466466/pdfFile.pdf
http://file.swcms.net/file/appbank/ir/news/auto_20160128498997/pdfFile.pdf
また、この調査報告書が出された2ヵ月後に犯人は刑事告訴され、その半年後に捕まっています。
事件発覚から約10ヵ月、上場からは約1年で幕引きとなりました。
コメント欄より:疑惑の焦点を簡潔についている人 ↓
その後もいろいろあって、横領事件であれこれしていた時より、今のほうが株価はすごく下がっています。
登場人物紹介で強力な協力者
まず本編に入る前の登場人物・団体の呼称を紹介するページで、いきなりぶっこんできます。
本件、経理責任者の木村氏が犯人なのは知っていましたが。
な、内部監査室長が協力者ってか。
そりゃ横領やりたい放題やわ。
内部監査という部署は、社内のルール・規約などコンプライアンスが守られているかを見張る、いわば警察のような役割をします。
金回りの不正もチェックします。社長と同程度の権限をもつ企業もあります。
それが犯人に協力してたとなっちゃぁ、お手上げですわ。
ちなみにI氏となっているのがマックスむらい氏。この調査報告書の中ではあまり活躍(登場)しません。
ただ、やはり責任無しとはならないし、この不正に気付くチャンスがあったことは書かれています。
しかも「AppBank Network事業部」という、まさに横領(不正送金)が行われていた事業はむらい氏が立ち上げたってなってるじゃないですか・・・。
自分が発進させたプロジェクトが想定の利益より低いという事実に、そこまで無関心でおれるものなのか。
確かに犯人である木村氏が、意図的に虚偽の報告や工作をしていたのは随所に書かれている事実なのですが、あまりにザルじゃないかと思います。
はじまりは税務署
税務署「この支払先、おかしいよ」
AppBank「あ、調べます・・・・経理の人間がおかしな所に支払ってますね」
● 税務署(外部)からつっこまれたから、調べて発覚した。
ちなみに、実際は支払う必要のなかった費用を計上・支払っていたのが横領だから、会社の純利益が下がっており、この時点ではAppBankはナチュラルに脱税している状態(後に払っている)
横領規模の巨額さ、そして注目の時期
● 約2年間でAppBank社の年間利益の約半分である1.5億円を横領、つまり、毎年利益の25%を横領していたようなもの。
それに税務署からつっこみ入るまで「気づかなかった」経営陣。
● 上場したのが2015年10月、上場審査でなぜ横領が発覚しなかったのか。
監査法人や主幹事は何やってた?
こういった厳しい目が向けられる期間も、木村氏が嘘と工作でかいくぐったらしい。
協力者A氏(内部監査室長)も不正だと知らなかった
● 5%の報酬もらいつつ社内で横領に協力していたのに「その認識はなかった」
さすがに無理があるやろ。調査側も怪しんでるやんけ。
だがしかし、駄菓子菓子。
AppBankの関係者はとにかく知らぬ存ぜぬを貫かなければなりません。
犯人:木村氏一人が全てやった!あいつは極悪人!というふうに持っていかねばならないのです。
【重要】横領金の使い道を華麗にスルー
ここが調査報告書のハイライトだ
● 調査では限界だ(調査委員会の見解)
使い道は全部分からず、1億くらい不明です。
木村氏が使い道を申告してるけど、それも事実か分からない。
● 木村(犯人)の申告
恐喝されてて3,000万円以上渡したで。
使途の供述の中で一番金額がデカいんですけど。
横領をやっていた動機ともとれそうなくらい。
やまもといちろう氏も、「そこをスルーするんじゃねーー!」と、しつこく述べていた重要項目。
AppBank社の開示した調査委員会報告書は、反社会的勢力とAppBank社の繋がりを明示したくないために、敢えて発表に盛り込まなかったのではないか、という疑いもないでもありません。
一番大事なところなのに、そこをなぜ、事態がある程度判明するまで調べないで信ぴょう性が乏しいと判断したのか、AppBank社やマックスむらいさんの説明では分からないのです。
ザ・忖度。 これが大人の仕事っぷり。
反社会勢力との繋がりが証明されてしまうと、AppBankは上場廃止が濃厚、銀行からの新規の融資も難しくなるかも知れません。
ここを否定していないと、上場企業としては即死級なのです。
だからみんな「不正には気づかなかった、知らなかった」と言わないといけない。
知っていて見逃していたなら黙認していたことになり、消極的にでも、反社会勢力と思わしき方々へお金を流していたと認定されかねません。
そうでなくても上場時の虚偽申請(不正送金は存在しない支払いを計上していた為)は確実なので、もういつでも上場を取り消されても文句を言えない状態にすでになっているのです。
一般投資家の株主が不憫すぎる。
犯人の動機「間違いを事実にしてしまえ」
● 木村氏は間違いに気づいていた
前任者が支払先の無い買掛金を計上していて、このままだとそれがどんどん増えるから、実際にどこかにお金を送金すれば、処理されたことになるじゃん!
この説明を、堂々としたのか、犯人。
さすがや、横領をやらかしよる人間はこれくらい図太くないと。
その支払先は木村氏が手数料などを払ってお願いした個人だったり、木村氏や協力者が持ってるペーパー会社であり、結局木村氏の手元に金がくるようになってる。
「不正会計を不正じゃなくするために俺の作った支払先に支払いを実行、そうすると帳簿上はオールオッケー☆その金は俺がもらうぜ」
● AppBankの経理管理ヤバすぎない
・横領の前から経理上は間違えていた
・おかしな支払先に巨額な支払いを2年間実行
・事業の利益率が下がっていたのに原因を調べなかった
これらを全部「気づかなかった」とか、木村氏本人の嘘と工作によってだまされていたというのは・・・。
木村氏が1企業の経営陣達をとことんあざむけるほどクレバーな悪党だったということでしょうか。
犯人の悪党っぷり
● 意図的なデータの改ざん
● 発見されないような工夫
送金記述を3分割して別ページに記述、一つの送金先に大きな金額が流れていることを誤魔化す。
送金先の順番をランダムにして確認しづらく。
● 不正計上を始めたのは前任者だ
(でも不正送金を始めたのは犯人)
● 病気のせいで記憶が無い
● DTT(監査法人)がやってきたら支払先を隠ぺい、銀行にはあとでFAX
● 嘘の説明と手数料で協力者をGET、そのA氏をAppBankに紹介して入社させる
● 木村氏が積極的に、意図的に他者を排除し、支払い等の業務を囲い込んでいた。
● 後任にも虚偽説明
● 社長に作れと言われてまともな資料を作らなかった
● 横領止めた後も嘘の説明
経営陣のボケナスっぷり
● H氏(専務)が全部支払いのチェックしてた
「3万未満の少額経費でも業務への緊張感を持たせるためにチェックしてた」
→結果 1.5億横領されてました。
● 内部監査でも横領のあった事業だけスルー
● 履歴書無しで採用、もちろん犯人も協力者も
「能力的にも信頼性の観点からも疑念の余地なし」
→結果 1.5億円2人で横領やってました。
● 犯人は信頼・評価が高かった。
→業務への責任感、粘り強さ、フォローは横領の工作を熱心にしてたから。
H氏のお飾りっぷり。
仕事しろよ。
報告書のおわりに、そして感想
犯人が悪意と意図をもって工作をやっていたから仕方ない部分もあるが、経営陣もあかんやろ。さらに管理体制を強化してがんばってや。
いや、普通の会社はここまでザルじゃないから。
感想
どっちもどっち。
犯人も、協力者も、企業側も登場人物全員の言い訳が、無茶な保身ばかりでした。
証言と行動に整合性がない。
しかし、このもやもやが現実。
現実には様々な力や思惑が絡み合い、白黒つけられないことが多い。
結果、この後犯人は逮捕され、AppBankは上場企業としてなんとかお咎めされず継続しています。
が、事件当時よりも株価や業績は瀕死。
一般投資家たちの目には忖度や情状酌量はなく、実績が最優先。
実績を回復させることができなかった経営陣。
AppBankに対する投資家たちの審判は正しかったと思います。