金融商品アフィリエイトの問題点 ~誰に責任があるのか?~
僕はブログを立ち上げた当初から、
「悪質な投資勧誘をするブログ、アフィリエイトに注意しましょう」ということを広めることを目的の一つとしています。
しかし、それが無くなることや一律の取締りはすぐに実現はしません。
消費者側のリテラシーをあげる注意喚起が個人でも可能な手段なので、こういった地道な発信は続けています。
普通の消費活動(商品を買う・サービスを受ける)という”商品”と、投資・金融商品というものはまったく違います。
普通の買い物はお金を出して買えば対価としてモノやサービスが手に入りますが、投資は、かけた元本が保証されないものも、時には元本以上のお金を払う必要が生じ、借金になる場合さえあります。
「もうける」ことを実現する為には自分のお金をずっとリスクに晒す、そういう行為です。
コツコツやれば必ず儲けられるわけでも、勉強をすれば必ず儲けられるわけでもありません。
必勝法なんてない。
投資は「不確実なもの」なんです。
リスクが高く、システムやルールが複雑で手数料の高いものもあります。
少なくとも他人様に、気軽にクチコミで「これいいよ!」ってな勧め方をできるものではない、と個人的に思います。
金融商品を紹介するアフィリエイトは、悪いことをする人だけが棲息するシステムではありませんし、真面目に取り組んで投資を紹介している人もいます。
とても丁寧に、用語やリスクの説明をしておられる方もいました。
ただ、「悪用可能な部分もある」ことも確かです。
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長い記事になってしまったので、まとめを先に書きます。
投資初心者の顧客にとって厳しいものでした。
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- 大前提としてダメなこと
- 4つの立場
- 宣伝で興味を惹き、客が口座を開設する流れ
- 客が金を落とすからこそ回るシステム
- インターネット経由の申込「勧誘」されていない?
- その内容を理解した上で画面上のボタンをクリックする
- 初心者が読んで理解できるとも思えない
- じゃあイケハヤだってこれを読んでいなければいけない
- 金融業者とアフィリエイトに責任有りとされた判例
- 調べてみた所感
- さて、このお話にはまだ宿題があります
大前提としてダメなこと
大前提として、どんな商売であれ、客に嘘や間違いを言って勧誘したり契約を促してはいけない。
これは当然のこと。
さらに投資や金融商品に関しては、「資産が少ない人」「金融商品のルールやシステムを理解していない人」を勧誘・契約してはいけない
適合性の原則というものがあります。
『事例で学ぶ金融商品取引被害の救済実務』 三木俊博 編著
引用 P.7
ちなみに、金融商品の販売と購入は消費者契約法の適用対象でもある。消費者契約法でも、不実告知と重要事項の不告知および断定的判断提供を禁止しており、金商業者が禁止行為に違反したときには契約を取り消して、支払済みの代金の返還を求め得る。
だいたいこれは、勧誘も契約も、顧客に働きかけるのは単一の業者、もしくは提携業者である前提のように書かれています。
不正な勧誘をしたのち契約、この一連の責任の所在が明らかです。
ところがアフィリエイトの仕組みを介すると、客から見て、「勧誘」(ブロガー等)と「契約」(金融業者)が分離してしまいます。
さらに「勧誘」と「契約」が直接連携していない状態に自然になっています。
ASP(アフィリエイト・サービス・プロバイダー)が仲介をしているからです。
4つの立場
アフィリエイトのシステムは以下のように4つの立場があります。
①アフィリエイター(ブロガー等)
③金融業者
④初心者の客
①アフィリエイターと③金融業者は、直接お金のやり取りはしません。
宣伝で興味を惹き、客が口座を開設する流れ
①悪質ブロガーが不特定多数に向けた宣伝・勧誘・金融商品の紹介をします。
④初心者がそれを目にとめ、興味を惹かれます。
ここで正確で誠実な宣伝がなされているかは、実質ブロガー①個人にゆだねられています。
しかし「この投資、リスクが高いよ!」などと言うと敬遠され、逆に「簡単だよ、リスクも低いよ、儲かりやすいよ」という雰囲気を出したほうが客は投資を始めたくなるのは簡単に想像がつきます。
そして①悪質ブロガーは、④が投資で損しようと関係無いという態度を取ります。
「強要なんてしていない」「投資は自己責任」と。
客④がその気になる。ブロガー①のサイトを経由し、金融業者③で口座を開設。
客④が口座を開設したのでブロガー①は②を介して報酬を得られます。
客④が投資を始めれば業者③は客から手数料が得られます。
後述しますが、ネットで口座を作った客④は「自主的に口座を作りに来た」と見なされるようです。
●ブロガー①は
客④から直接お金はもらいません。
●金融業者③は契約をしますが、
客④を勧誘はしていません。
ASP②が③から①のお金の流れを仲介します。
こうやって勧誘と契約の役割を分離することで、業者側の利便性が高まることに加え、適合性の原則についての責任が分散されています。
客が金を落とすからこそ回るシステム
投資勧誘のアフィリエイトは高額報酬であると、イケハヤ自身が他ブロガーにお勧めをしていました。
そもそもその報酬が少ないならば、彼は手を出していないと思います。
ということは、金融業者③が元々お金をたくさん出しており、また、それによって口座を作った客④からそれを上回る手数料収入が見込めるからこそ、このアフィリエイトのやりとりが成立するということです。
つまり、大勢の初心者客④がもたらすお金が一番デカいということになります。
大勢の① < ② < ③ < 大勢の④
つまり・・・・この仕組みは、
客④が多く金を落とす前提で回っているのです。
この中で一番立場も弱く、投資に疎いのは投資初心者の個人である④です。
①と②にはあまりリスクや持ち出すお金はありません。
③は企業組織ですし、販売促進や広告宣伝費としてお金を出しており、通常の営業活動に必要な経費としてコントロール可能です。
この仕組みで口座開設者が増えなくても、大きな損害が出るわけではありません。
投資初心者の④は・・・・
この図式で、もしも①に騙され、リスクの高い投資を始めてしまったら・・・?
あまりに不利だと感じます。
僕が取り上げているブロガー①の立場のイケダハヤト氏(通称イケハヤ)は、投資の説明に虚偽や間違いが多く、「儲かる」前提の話ばかりが強調され、リスク説明もまともにされていません。
ブロガー①は投資の専門家である必要はなく、一般人でも参入可能な現状で、例え騙そうという気が無い人でも、難しい金融商品の説明を齟齬なく行える保障はありません。
では、プロである金融業者③に責任はないのでしょうか?
そこが微妙、ケースバイケースなのです。
先ほど少し触れた、「ネット経由の客」は勧誘されていないとみなされることがあります。
また、同時に、ネット経由の客は対面でリスク等の重要事項説明を必ずしも義務付けられてはいないのです。
インターネット経由の申込「勧誘」されていない?
以下に、インターネット経由での申込があった客に対する「適合性の原則」についての複数の見方の資料をリンクはっておきます。
ネットで申し込んだら「勧誘や助言を介していない」とみなされていたり、判例でも「顧客の属性を申告できるフォームを作るのは義務」と業者側の責任に言及していたり、ネットの利便性面を優先したり・・・。
個々によって判断はいろいろあるようです。
インターネット取引における説明義務|法律コラム|J-Net21[中小企業ビジネス支援サイト]
(金融法務研究会報告書24)
その内容を理解した上で画面上のボタンをクリックする
以下の金融業者向けの指針に「④インターネットを通じた説明の方法」とあります。
「顧客がその操作する電子計算機の画面上に表示される説明事項を読み、その内容を理解した上で画面上のボタンをクリックする等の方法で、顧客が理解した旨を確認することにより、当該説明を行ったものと考えられる。」
業者は、説明事項を画面に表示させて、「理解できましたか?」とか「同意できましたか?」のボタンを客が押せば「説明した」と見なされると。
でもさ、でもさ・・・
”顧客がその内容を理解した上で”なんて実質分からないじゃん。
ネット経由で口座の申込をしてきた人は、業者は直接勧誘しておらず、自主的にやってきているし、画面表示とボタンクリックで説明が果たされている。
例えばイケハヤに「儲かるよ!」「年利●●%の期待」などと事前に間違った情報を吹き込まれていても、業者側から見たらネット申込ではそんな確認はせず、「自主的にやってきて確認事項を読んでクリックして重要事項を理解した客」という扱いになるようです。
そんな・・・
初心者が読んで理解できるとも思えない
じゃあそもそも、
この事前に読まねばならない書類を自主的に読んで初心者が理解できるか?
種類も多いが・・・
例)ヒロセ通商の新規口座開設画面 ※アフィリエイトではありません
僕が読んでも、正直
「どこに何が書いてあるのか」
「どこが自分の取引にとって重要な点なのか」
そんなことは分かりづらい。
↓ 重要な証拠金や損益に関わる言葉の”定義”だけでもすぐに理解できない。
ちなみに僕はずっと「約定」を”やくてい”って間違った読み方してました。
正確には”やくじょう”
https://hirose-fx.co.jp/pdf/yakkan.pdf
この量、全てを初見で読み込んで理解する人なんているんだろうか。
(まあ、いないだろうな・・・)
これを読んで理解するのが、ネット経由で申し込んだ初心者の自己責任の範疇になるようです。
じゃあイケハヤだってこれを読んでいなければいけない
イケハヤは再三、「自分が投資をやってみてその体験を親切に説明している」と主張します。
ということは、この契約締結前交付書面等を彼も読んで分かっていないといけないということです。
しかし彼は、「FXの仕組みで借金をしたわけではない」 などと間違ったことを言っています。
何度読んでもムカつきます。
イケハヤがよくお勧めしているヒロセ通商の「リスク説明書 (LION FX個人のお客様用)」にはちゃんと「預託された資金の元本を上回る損失発生の可能性」があると複数の条件下で書かれています。
そしてこれは、別段ヒロセ通商に限ったわけでは無く、日本の業者ではごく普通のルールです。(海外の業者はまた別)
また、FXなど保証金(担保)を差し出してそれ以上の評価額のポジションをとれる信用取引全般を、借金をして取引していると同等と表現する方もいます。
https://hirose-fx.co.jp/pdf/risk.pdf
イケハヤさん、初心者に対して「なんでリスクを全て説明せねばならんのか、自己責任」とおっしゃるなら、あなたは当然これを読んで理解してなければいけませんよね。
あなたが読んだり理解していないものを、あなたのアフィを踏んで投資をした方には求めるということですか?
逆に、知ってたのにリスクとして説明していなかったり虚偽の説明をしていたらもっと悪質ですよね?
金融業者とアフィリエイトに責任有りとされた判例
以前も紹介した、口座開設アフィリエイト(成功報酬)によって不正な勧誘をした場合の、アフィリエイター側と金融取引業者側双方に責任があるとされた判例。
この判例の中では「客が誤った理解をして申し込みをしている可能性があることを認識すべき」となっています。
もちろん個々でこういった責任の所在や量は変わります。
投資者の判断を誤らせるものである。Y3は、この誘引行為を顧客獲得の手段としていたのであるから、外国為替証拠金取引に関する誤った理解をしている者が申込みをしている可能性があることを認識していたはずであり、そうでなかったとしても少なくとも認識すべきである。それを前提にして、より慎重な説明や適合性審査をすべきであるのに、前記のような不適切な口座開設までの手順指導を容認し、さしたる適合性審査をするでもなく、本件取引を開始させたのであり、この一連の顧客獲得行為自体が違法である。
本判決は、Y3の責任の判断に力点を置いている。インターネット取引においては、アフィリエイトの責任が問題になる。
アフィリエイトとは、ウェブサイトやメールマガジンなどで、広告元の企業サイトにリンクを貼り、そこを経由して広告を閲覧したり、商品やサービスを契約すると、一定の報酬がアフィリエイター*3に支払われるという広告手法である。
本事案は、アフィリエイトについて、ホームページ上に企業等の広告を貼り付けた責任として、アフィリエイトとリンク先の企業(広告主)の双方に損害賠償請求を認めたもので、この種の問題の先例となる。
他方、本判決は、「100%の勝率」などということは通常考えにくいにもかかわらず、安易にこれを信じたことは大きな過失であるとして、5割の過失相殺を行っている。投資取引においては過失相殺されることが多いが、過失相殺しない判決も少なくない。その面では、問題を残した。
調べてみた所感
冒頭に書きましたが、あまりに、あまりにネットを見て「儲け話にあおられて投資を始めた初心者」にはツラい仕組みだなあと、思いました。
入口である勧誘はプロでもない一般人で、良心がなく自分の利益しか考えないヤツなら、ただ初心者の欲望を巧みにくすぐる聞こえのいい話を提供し、「でもリスクはありますよ」ととってつけたように雑な説明をします。
そしてリスク部分の文字数が無駄に多い。
(内容はきちんとしていないのにたくさんリスクの説明をしているかのようなテイを装っている)
「勉強代」なんて負け惜しみです。
誰でも稼ぎたいから投資を始めるのです。
投資という物が、リスクや自分の欲望と戦う意思とともにあるものだということを、真に実感している初心者はいません。
だって、経験が無いんだもの。
だからこそ、せめて正しい知識で準備をして、投資に臨むべきだと思うのです。
切に思うのです。
大切なお金を、しょうもないブロガーのあおりで失って欲しくない。
さて、このお話にはまだ宿題があります
以前お相手していただいた まめち(@m0mch1)さん。
その時のやりとりの、この1ツイートを解説したのが今回の記事です。
金商法、適合性の原則には抜け穴があります。「web申込の客は自由意思で開設を選択しているとみなされ業者側には店頭程の説明を要しない」点です。
— 柳メロンパン (@87gimeronpan) February 23, 2019
アフィリエイトは金融業者の直接勧誘ではない。
このグレー部分で儲けているのがイケハヤです。
このやりとりには続きがあります。
イケハヤはいまだにヒロセ通商のアフィリエイトを継続しているようです。
それ以外の業者はややなりを潜めていますし、そもそも一度もイケハヤ氏が取り上げない業者もあります。
昨日マネパと比べたら利益は倍近かったです。
— 柳メロンパン (@87gimeronpan) February 22, 2019
まめちさんのほうが投資の知見は僕よりずっとあるので、お相手してもらえてうれしいです。ありがとうございます。
僕はちょっと違う見方をしています。ヒロセの訴求方法は初心者(消費者)に力点があり、イケハヤを許容しているのかな、という仮説です。
この時点でチラっと見ただけですが、直近の決算でマネーパートナーズよりヒロセ通商の利益率が高かった。
また、有報の適合性の原則に関する記述も各々温度差が見て取れました。
高額なアフィリエイトで初心者勧誘をする業者は、それほどもうけているのだろうか?
その疑念と興味が沸いたので、調べてみたいと思いました。
四季報の【比較会社】の以下3つと、ヒロセ通商の利益・有報の記述・広告の傾向などを比べて記事を書こうと思います。
7177 GMOフィナンシャルホールディングス
8732 マネーパートナーズグループ
8709 インヴァスト証券
現在仕事が忙しいので、いつ完成するか分かりませんが・・・。
もう5月にヒロセ通商の決算出てからのほうがいいかな、という気がしてきました。