投資初心者がハマりやすい罠 ~ナンピン~
値が下がったら「買い時」?
投資の初心者がよくハマる勘違いの話です。
例えばA社の株を1単元10万円分買って、株価が下落して9万円の評価額になったとします。
すると、10万円で買っていたものが「値下がり」したので、「お得に買える」と思い、さらに買い増しをすることがあります。
10万円で買った1単元、9万円でも1単元買ったとしたら、元本は19万円。
この状態で評価額が10万円に戻ると、1万円の利益。
戻れば、の話ね。
しかし評価額が8万円に下落すると、3万円の損です。
9万→10万
9万→8万
値幅の動きが同等なのに、損のほうが拡大します。
自分が最初に取得した額より下がったら買い増しを繰り返し、値が上がることを期待する手法をナンピン(難平)と呼びます。
都合の良い願望でできている
自分が買ってから「下がったら安く感じる」のは、当然です。
実際値下がりしてるんだから。
しかし、その下がった状態が「底」(近々それより下がらない値)かどうかは分かりません。特に初心者に「底」かどうかの判断がつくでしょうか。
あなたが買い増しをした後に上がる保証はどこにもないのです。
しかしナンピンという手法は、下がったら買って「いつか上がる」という願望で手を出してしまいます。
値が戻ったり、最初の取得価格より高くなれば利益も大きくなりますが、下がれば損も大きくなる。
つまり、最初よりもハイリスクな状態に自分から突っ込んでいっていることに、なかなか気づけないのです。
別の言い方をすると、リスクを集中させてしまうことになります。
リスクを分散させるということと逆なのです。
実はもう判断ミス
200万円で運用する例を作ってみました。
最初に1ドル100円で1万通貨:100万円を買ってスタート。
残り半分の100万円は余力として残しておくとします。
トータルは手持ちの日本円と株の評価額の合計(全資産)です。
1ドルが95円になってナンピンせずに下落①
①でナンピンせず100円に回復した場合はプラマイゼロ(手数料除く)なのではぶきます。
さて、さきほど説明した通り、95円から同じ5円の値幅でも、①のナンピンしないより②の損が大きくなります。
ナンピン(買い増し)をした時点で、初心者には③の意識しかありません。
別にそれは悪いことではありません。自信や確信をもって、「リスクが高くなるが、ナンピンして値上がりを待つ」判断に賭けるのもかまわないのです、が、ちょっと冷静になってみましょう。
そもそも1ドル100円で取得した時点でそれが値上がりすると思ったからその額で手を出したんですよね。値下がり予想をしていたなら、買うのを待つか空売りすればいいんですよ。
実は、ナンピンをしようか悩んでいる時点で、すでに一度判断ミスをしているのです。
判断ミス(損を出した)なら、まず、損切をするかどうかを判断しましょう。
実際①の95円になった時点で損切すればー2.5%の損で済みます。
でも初心者はその決心がなかなかつかないもの。
いずれあがるという根拠のない願望を持ち続けている人もいるでしょう。
そうやって口座に資金を拘束し続けることを「塩漬け」といいます。
実際相場は上下に動くものですが、時折ずっと一方方向に動くこともあります。
近い未来の動き、それを初心者が見極めることができるでしょうか?
そしてあなたは③のパターンで、少しだけ出た利益で潔く勝ち逃げできますか?
だってまだ上がるかもしれないでしょ?
そんなにバシバシと的確な判断はできないものです。
まだ見落としている視点
まだ重要なナンピンのデメリットがあります。
ココです。手持ちの日本円の差です。
①でナンピンをしない人には、手持ちで日本円が100万円あります。
対して②と③は5万円しかありません。
あなたが即座に使えるお金を減らしています。
①のナンピンをしない判断をした場合、選択肢はこんなにたくさんあります。
- 95円で損切する。
- 残りの100万円でドル以外の通貨に投資
- 残りの100万円で他の投資をする
- 投資以外のことに使う
ナンピンを選んでしまうと、これらの自由が奪われるのです。
値上がりを待っている間、ずっとです。
流動性のある資産を減らしている
同じ通貨(銘柄)を同じ投資手法で買い増しをせねばならない理由はどこにもありません。ドルの価値以外にも投資先はいくらでもあります。
それなのになぜ、一旦判断ミスをしたものに固執してしまうのか。
初心者は広い選択肢があっても、知識のとぼしさから、どちらが有用か吟味もできません。かといって損切も利確もできず、だーらだらと長期保有になってしまいます。
それでも利益が出る時はでますが・・・ただのラッキー、幸運を待っているというだけです。思考停止で待つだけならギャンブルと大差ありません。
そして待っている間、口座にお金が縛られているので、消費を我慢しなければいけません。
資金に余裕があったり稼ぎですぐにカバーできるならよいのですが、もし突然お金が要りようになった場合、不本意な値で利益確定をしないと現金にはできないのです。
結局そこで損をしていることになります。
①の時点で「自分の判断ミスを認める」「原因を分析できる」 そうなるには時間がかかります。
投資は、自分の判断ミスを受け入れられない人にはとても難しいものです。