【違法】血液クレンジングを勧めたら罪になる?その分かれ目は?
最初に結論
・見返りをもらって勧める発信をすると違法
・見返り無しなら合法
<参考>
「血液クレンジングをSNSで紹介した芸能人に罪はありますか?医療インフルエンサーについて」
こちらの高須幹弥先生の動画で、詳しく解説されています。
話されている事の抜粋文字おこしと、動画内に言及されている厚生労働省の「医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針(医療広告ガイドライン)」を読みつつ、血液クレンジングやニセ・似非医療を「お勧めしてしまう」側の問題を考えたいと思います。
- 最初に結論
- 素人だから罪無しなのではという質問者
- 「見返りがある場合れっきとした違法です」
- 違法、どういう法律か
- 患者も一般人も”規制対象者”
- 見返りをもらっているかなんて分からない
- 叩いている人もこの法律を知らない
- 道徳的な問題は
- この問題を考える発端
※注意
動画の音声の文字起こしについて、句読点や改行は筆者の感覚で行っております。
また語尾などを簡潔にしたり、繰り返される単語の省略は適宜している箇所がありますが、要約や内容の改変はしていません。
素人だから罪無しなのではという質問者
動画開始~
質問の読み上げ
「血液クレンジングを勧めた芸能人や有名人に罪はありますか?
なんかネット上で影響力のある人が、ネットで一般の人にトンデモ医療を勧めたのだから有罪だ、なんて意見があるけど幹弥先生はどう思いますか?私は芸能人だって医学の知識が無い素人なんだからしょうがないし、罪は無いと思います。」
質問者は「専門家じゃないので罪はないのでは?」と考えています。
それに対し、高須幹弥先生が「法律的な問題と道徳的な問題に分かれる」と整理して解説を始めます。
「見返りがある場合れっきとした違法です」
高須幹弥先生
芸能人がそういう医療を受けたことをSNSで発信すること、問題があるかどうかってことなんですけど、まず法律的な問題と道徳的な問題に分かれると思うんですけど、まず法律的な問題のほうが分かりやすいので法律的なことからお話しますね。
法律的な問題かどうかというのはすごくはっきりしていて、まあ、法律で決まってまして、対価とか見返りをもらってSNSで自分が受けた医療行為を発信するとか宣伝するっていうのは、これはもうれっきとした違法です。
例えば受けた治療の割引を受けたとか無料で受けたとか、あるいはそれを自分がSNSで発信してそれを見て受診した人はマージンが入る、紹介料が入るとか、そういうビジネス的なことをやってる場合はこれはれっきとした違法です。
で、見返り無しで単に自分が受けてた医療行為の個人の感想をSNSで述べただけだったらこれは違法では無いです。これは芸能人も一般人も同じです。
一般人も見返りをもらって、無料とか割引とか紹介料が発生して医療行為をSNSで発信するのは違法です。
(略)
これは血液クレンジングだけではなく、他の医療行為も同じです。
例えばビタミンC点滴とか美白点滴とかヒアルロン酸注射とか・・・(略) 整形手術とか脂肪吸引とかすべての医療行為に関していることです。
違法、どういう法律か
動画 2:50~
どの法律に基づいて違法かという説明をされています。
厚生労働省HPより
医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針(医療広告ガイドライン)等について(PDF)
このガイドラインのしょっぱなに、
「美容医療サービスに関する消費者トラブルの相談件数の増加を踏まえ」
「医療機関のウェブサイトに対する法規制が必要」
つまり、消費者トラブルが増加し、ネット広告からの影響が大きいので野放しにできず、対処として平成30年(2018年)に法改正されたと読めます。
患者も一般人も”規制対象者”
動画 3:29~
医療広告ってそのクリニックのホームページとかもそうだし、あとはリスティング広告とかバナー広告とかそういうもの全て含まれるんですけど。
大事なのはSNSで発信する一般人も広告としてみなされることがあるということです。
(略)”医療に関する報告規制の対象者”という項目がありましてそれを抜粋してみますと
「医師もしくは歯科医師または病院などの医療機関だけではなく、マスコミ・広告代理店・アフィリエイター(閲覧した人を誘引することを目的としてブログ等で紹介し成果に応じて報酬が支払われる広告)・患者または一般人等、何人も広告規制の対象とされるものである」
って書いてあるんですね。
一般人でも芸能人でもSNSで見返りをもらって医療を受けたことを発信するのは広告として見なされる、広告規制の対象になるわけですね。
ガイドラインPDFの20ページ目
動画4:50頃~
どういう広告がいけないか詳しく書いてある部分を抜粋して読む先生。
・患者などの主観や伝聞にに基づく治療などの内容または効果に関する体験談を広告としてはならない。
理由)個々の患者の状態などにより当然その感想は異なるので誤認を与える恐れがあるので医療に関する広告として認められない。
・個人運営webサイト、SNS個人ページ、第三者が運営するクチコミサイト等への体験談の掲載は、医療機関が広告料などの費用を負担する等の便宜を図って依頼している等、誘引性が認められない場合は広告にならない。
要はさっき話した見返りをもらって受けた医療行為をSNSで発信するのは広告とみなされるし違法行為なんですね。
で、見返りをもらわないで普通に定価でお金を払って医療行為を受けて自分の感想をSNSで発信するのは問題無いですよ、クチコミサイトとかに投稿する時も見返りをもらってなければ問題ないですよ。
(略)
見返りをもらっているかもらってないかが大きな分かれ目のポイントなんです。
見返りをもらっているかなんて分からない
法的に問題があるかは見返りの有無ですが、叩かれている有名人・芸能人が見返りをもらっていると自ら言う訳はないし、そこは分からない、と先生は続けます。
ただ、先生の個人的な経験として「ほとんどの人が見返りもらってるのが現実、たまに美容や整形のマニアはいるが、大半はビジネスでしょう。」とのこと。
叩いている人もこの法律を知らない
整形ユーチューバーやインスタグラマー、インフルエンサー、見返りをもらってやってるのは実は全て違法とのこと。
しかし、こういう法律があるということをほとんどの人は知らないし、今回血液クレンジングでネット上で芸能人を叩く記事、叩く書き込みでこの法律に触れているのを目にしていないとのことです。
動画9:30頃~
いろいろtwitterとかネットニュースで今回の血液クレンジングを受けて、発信した芸能人を叩く記事や書き込みがあるんだけど、だれ一人この法律の事を述べてる人はいないんで
(略)
クリニック側の一部の人間しか知らないわけですね。
で、実際無法地帯になってて、整形インフルエンサーというのは世の中ゴロゴロいて、違法行為をやってて無法地帯になってるんですけど、なかなか厚生労働省もね、それを全部逐一チェックして通報するとかね、罰則を与えるとかね、できていないんですよね。
それが怠慢なのか、人数が足りなくてできないのか。
実際でどれに見返りがあって見返りないのかなんて確認しないと分からないし、なかなかそれはね人海戦術としても大変だし全部はできないんですけど。
それをいいことに、インフルエンサーもクリニックもやりたい放題やってるのが現状で。
実際僕の所にも、高須クリニックにもインフルエンサーの問い合わせが来るんですよ。(略)
「私は整形ユーチューバーでチャンネル登録者が40万人いて、いろんなクリニックで施術を受けてそれを発信して宣伝しますのでぜひ幹弥先生の施術を受けたいです」って。
で、広告しますんで無料で受けたいです、あるいは患者さんを紹介しますので私のYoutubeやインスタグラムを見て先生のところにかかったのはマージンとして10%欲しいですとかね。
そういうふうに商売を提案してくる人がものすごい数いるんですけど、それは違法行為なので僕はもう全部断ってます。
高須クリニック全体としても全部断ってますね。で、うちが断ると大抵そういう人達は他所と契約して他所で治療をしてまた宣伝するって感じになってて。
インフルエンサーに依頼すると効果があるようで、そこそこ客が来るので、味を占めたクリニックはやっている、HPのトップに「インフルエンサー無料」という広告を載せているところさえあり、それを国が取締れていない現状がある、とのことです。
取材者に無料で商品やサービスを提供し、それを記事にするという行為はともすれば普通の行為に思えます。
逆に取材に来た人から定価で商品代を店側も取らないですよね。
それが飲食店や一般の物販であるならここまで神経質ではないでしょうが、こと医療に関する広告は健康被害に結び付くから厳しくなっている、と。
ていうかよく考えたら「ニセ医療を叩くのはPVを伸ばすためだ!理不尽!」ってすごい理論ですな。
— Taka🔥救急医 (@mph_for_doctors) 2020年2月11日
例えPV伸ばすことが目的だったとしても、ニセ医療なんだから叩かないとダメでしょう。
ニセ医療を勧めることを、その辺のラーメン屋さんをオススメすることと同じレベルで考えてません? https://t.co/oQy2LLKhDF
医療関係の広告にたずさわる責任はその他の商品よりも重い。
それはそれを信じた人にもたらされるリスクが大きく、「後遺症・障害・死亡」という取り返しのつかない事態を引き起こすものも含まれるからです。
Take救急医さんが述べているように、そこらの飲食店のクチコミを書くので無料にしてもらうという行為とは訳が違う。
道徳的な問題は
法律的にOKでも道徳的に問題がある場合があるが、見返りがなく発信するのはどうか?
それは合法であり、高須幹弥先生もセーフだという意見です。
あくまでね、本当にとんでもないインチキ医療とか詐欺医療に関しては論外なんですけど、まあグレーゾーンの医療行為って多い訳ですよ。
効果があるのかないのかはっきりしないんだけど、なんとなくちょっとしたエビデンスもあるしそれを受けた人たちは効果を感じてるっていう感想をいう人が多いって言うの。
まあプラセボもあるんですけれど、そういうものに関しては(見返りがなければ)セーフだと思う。
あくまで一個人の感想って言う一サンプルなんですよ。
(略)
プラセボっぽい治療だったらそれを否定するクチコミだってあると思います。
(略)
すべての医療行為の感想を違法にしたりアウトにしたら、世の中なんの情報もなくなってしまいますので、一般の人が治療を受ける時の参考にするためにもいろんな意見があっていいと思う。
(略)
見返りをもらってなければ自分の受けた治療を率直に感想を述べるのは全然僕はセーフだと思いますし、むしろそれはやるべきだと思います。
この問題を考える発端
血液クレンジングは効果がある無しの議論がある訳ではなく、大勢の医師がはっきりと「効果など期待できず、それよりも重大な健康被害のリスクあり」と警告しています。
しかし2020年2月中旬、血液クレンジングを推奨する発信をしていたはあちゅう氏が過去の「ステマである」とした記事を否定したり、「肯定する医師がいる」と蒸し返して炎上していました。
そして医師が肯定をしているからこそ専門知識のない芸能人やインフルエンサーなどが騙され、主観に基づいた体験談を発信して叩かれるのは「叩かれ過ぎ」「叩きたいところだけを叩いている」「根本の施術している医師が悪い」などと理不尽であると主張しています。
しかし僕はそうは思いません。
例え善意で発信していたとしても、それが現状で人に害を与えるようなものであるのなら、批判されて当然です。
そしてそういった怪しい医療行為をする医師自身が表になかなか出てこないのなら、スピーカーとなって一般人に広め、興味を喚起したり接点を持たせたりする側の責任はあると個人的に思っています。
怪しい自由診療を受け入れるのは個々の責任ではありますが、それに大きなリスクが伴う以上「大勢に推奨する」必要などどこにもないと思います。
それはリスクの大きい投資話をもちかけて、大損した人を「自己責任」と切り捨てるのと同じです。
そもそもその話を発信しなければ良いんです。
大勢の人に伝わらなければ、いざ被害がでたとしても少なく留められるということ。
また、見返りをもらっていなかったとしても、優良誤認、虚偽や誤謬(事実と違うという事)、リスクの説明がなかったなどは医療広告として論外。
この点でもはあちゅう氏の発信は批判を浴びて当然です。
そして「見返りを得ていただろう」という指摘の記事もあります。
それは今回の法改正前だったのかは分かりません。
しかし、はあちゅう氏は自分はお金をもらっていないと否定しまくっています。
クリニックから「自分は直接お金をもらっていない」の意でしょうか。
金を払って施術を受けた ↓
はあちゅう氏はBazzfeedNewsの取材の中で「記事にする前提なので施術が無料になったりした、サービスの一環なのかな」として、レストランでライターの飲食が無料になることを「よくあること」と引き合いに出しています。
ネット記事としては異例とも言える9千字近い分量を費やして取材の現場であった一問一答を忠実に再現し、はあちゅうさんの主張をできる限り正確にお伝えしたつもりです。
— 神庭亮介 (@kamba_ryosuke) 2020年2月11日
はあちゅう、血液クレンジング拡散を謝罪「ステマではない」「何も信じられない」 https://t.co/JC6SRtBHEu
記事掲載を前提としたブロガーやライターを同伴してクリニックにいっていて、その人たちが無料で施術を受けることになんとも思っていなかったということです。
これがいつの時点の話か僕は分かりませんが、高須幹弥先生が言っていた法に照らしていうと、完全に違法行為です。
クリニック側が無料にする(定価分の報酬を渡しているのと同等)という便宜をはかっています。
医療広告は飲食店の広告とは違います。
今回調べてみて分かったことは、消費者庁や厚生労働省がこういったものの害を深刻にとられて対応をしようとしているということです。
つまり、こういった医療広告を信じた人たちに、被害者がすでにいるということです。
まだ取締りまで手が回らなくとも、違法であるラインが示されているので、こういった発信をする側に慎重さ、情報の重さの自覚がもっと求められるべきだと思います。